歯周病概論(おおまかなお話)1
歯周病は以前は歯槽膿漏(しそうのうろう)と呼ばれていたものです。
大別すると
(1)歯肉炎(しにくえん)
(2)歯周炎(ししゅうえん)
となります。
(1)の方ですが
こちらは、教科書的には「炎症が歯肉にのみ限局している」となります。
『歯ぐき(歯肉=しにく)が腫れている、赤い、血がでる』というような状態です。
→歯ぐきのみなので比較的治りやすい段階です。
そして、(2)ですが
教科書的には「炎症がその他の歯周組織にまで波及している」となります。
かなり端折ってシンプルに言ってしまうと、
歯の埋まっている骨(歯槽骨=しそうこつ)がとけはじめている!といったところです。
『歯が揺れている。噛むと痛い。口臭がする』などの症状が出てきます。
→やはり、(1)よりは治りずらいです。
歯周病概論(おおまかなお話)2
どうして歯周病になるのか?
→歯垢(しこう=プラーク)と歯石がかかわっています。
簡単にご説明すると歯垢とは、
読んで字の如し。「歯の垢(あか)」のようなもので、
たくさんの細菌を含んでいます。
歯ブラシでとれます。
歯石とは、
読んで字の如し。「歯の石(いし)」のようなもので、
歯垢が唾液等と結びつき硬くなったものです。
直接には害を与えませんが、「足場」になります。
歯ブラシではとれません。
歯周組織(歯肉、セメント質、歯根膜、歯槽骨)に
(1)歯垢が長期付着
↓
(2)縁上歯石形成
↓
(3)縁下歯石形成
というのがおおまかな流れです。
歯周病概論(おおまかなお話)3
歯周病発生の流れ
歯周組織(歯肉、セメント質、歯根膜、歯槽骨)に
(1)歯垢が長期付着
↓
(2)縁上歯石形成
↓
(3)縁下歯石形成
(1)歯垢は歯ブラシでとれます。
的確に歯ブラシがあたりさえすればとれます。力はいりません。
ただ、これがなかなか難しいものです。
磨きづらい部位もありますし、磨きクセがあったり、時間がなかったり。
歯ブラシのあたらなかった部位には歯垢が残ります。
次の回に運良く(?)歯ブラシがあたってくれればとれますが、
そうでない場合はまた残ります(長期付着へ)。
→『歯ぐきが赤い、腫れている、血がでる』=歯肉炎となっていきます
(2)「えんじょうしせき」と読みます。
「ふちよりうえ」?
歯肉縁より上ということですが、
簡単に言ってしまえば、口の中を見て、見える範囲についている歯石のことです。
長期付着していた歯垢が石になって歯にこびりついてしまった状態です。
これで、敵の『足場』ができてしまったことになります。
『足場』??
歯石はザラザラしています。
そこに新しい歯垢がやってくると、くっつきやすく、とれにくくなります。
そのうち新しい歯石に変化。そこにまたまた歯垢→歯石に変化。
上記を繰り返し、雪だるま式に歯石が大きくなっていきます。
(3)「えんかしせき」と読みます。
「ふちよりした」
簡単に言ってしまえば、目には見えない部位についてしまった歯石のことです。
雪だるま式に大きくなった歯石は勢力拡大を目指して(?)
歯と歯ぐきの間に割り込みます。
新たなスペースの確保です=歯周ポケット。
そこにまた歯垢がやってきての負のスパイラルです。
今度は歯石が大きくなるだけではなく、あらたな毒素を出して
歯根膜(しこんまく)、歯槽骨、セメント質を壊していきます。
→歯が揺れはじめます。
歯周病概論(おおまかなお話)4
歯周病発生の流れ
歯周組織(歯肉、セメント質、歯根膜、歯槽骨)に
(1)歯垢が長期付着
↓
(2)縁上歯石形成
↓
(3)縁下歯石形成
それでは予防、治療法は?
(1)歯垢を残さないように磨けば良い!
前回も触れましたが、歯垢は歯ブラシが確実にあたりさえすればとれます。
ただ、それがナカナカ難しいものです。
それまでのそれぞれの人生で確立されてきた個々の磨き方があるからです。
ちょっとしたコツなのです。
それさえわかってしまえば、
『歯ぐきが赤い、腫れている、血がでる』といったこの段階での症状は
アっというまに、劇的に改善してしまいます。
歯周病治療の中で唯一「治癒」という言葉を使える場面なのかもしれません。
→みなさん。一度、ブラッシング指導を受けてみませんか?
(2)歯垢は歯ブラシをすればとれますが、
歯石は自分ではとれません。
→歯科医院でとることになります。
主に、超音波スケーラーとよばれる機械でとります。
少しイヤな音がします。
その音のせいか歯までけずれるのではないか?と思われる方もいらっしゃいますが、
小刻みな振動で叩いて落とす仕組みなのでその心配はありません。
『「足場」であるところの縁上歯石。
こいつをためこまないで、
きちんと取り除いておくようにする!!』
☆これはかなり重要なことだと思います☆
敵の足場を外しさえすれば、
歯ブラシの仕方を充分マスターしているという条件つきで
一気に「健康な状態」に戻ることさえできます。
それに対して、グズグズして足場をそのままにしておくと、いずれ(3)に移行します。
そうなると泥沼状態です。そこから抜け出すのはなかなか難しく、
「健康な状態」は、遙か遠くにかすんで見えなくなってしまいます。
縁上歯石をとるか?とらないか?
分岐点!
です。
(3)縁下歯石がつきはじめると、
次に、歯根膜が破壊され、セメント質に毒素が付着します。
そして、歯を支えている歯槽骨が破壊され(とける)はじめるのです。
骨がとけて支えがなくなると.....
少しくらいなら平気でしょうが、
とけた量が多くなっていくと、歯が揺れはじめます。
その量がさらに増えると、さらに揺れます。
そして最後には、歯が抜け落ちてしまいます。
この段階での治療は?
→原因となっている縁下歯石や
汚染されたセメント質の表層、不良肉芽
を取り除くことが第一となります。
→SRPとよばれるもので、麻酔をして手用スケーラーを用いて行います。
ただ、
「一度破壊された組織は、基本的には元には戻らない!」ので、
症状をこれ以上悪化させない。
何とか食い止める。
といった治療となってしまいます。
『早期発見即時処置』
歯科の大学の予防学の授業で習う言葉です。
→早目にみつけてすぐ治す。
虫歯もそうですが、歯周病では特に重みをもつ感じがします。
(2)の段階で処置をするかしないかで予後がまるで違ってきます。