う蝕概論1 う蝕とは?
う蝕(うしょく)とはいったいなんでしょうか?
う蝕は口腔内の細菌が糖質から作った酸により、
歯が脱灰されることにより起こる歯の実質欠損…簡単にいうと、いわゆる「虫歯」です。
このコラムでは一般の方にはあまりご存じのない、
虫歯の治療っていったいどうなっているの? ということをお話ししたいと思います。
その前に、歯の構造を簡単にご説明いたします。
●エナメル質
歯の断面図では、一番外側の部分。
簡単に言ってしまうと、口の中に見えているとこ。虫歯の無い人はツルツルしていますね。
☆とっても硬いです!
●象牙質
エナメル質の内側の部分。
☆エナメル質よりはかなりやわらかいです。
☆神経支配があります。
●歯髄
象牙質の内側にあります。
一般的に『しんけい』と呼ばれています。
血管も含んでいます。
う蝕(=虫歯)は、大別すると次のような状態に分けられます。
・C1 う蝕がエナメル質に限局
・C2 う蝕が象牙質に進行
・C3 う蝕が歯髄に進行
・C4 う蝕が歯根にまで進行
それぞれの状態で治療方法が変わってきます。
う蝕概論2 初期段階の治療法
●C1 う蝕がエナメル質に限局
本当に初期の段階です。
エナメル質は神経支配をうけないので、この段階では痛みを感じません。よって、相当注意深く観察していないと、自分ではなかなか気づくことができません。
この段階だと、治療は簡単!
プラスチック(コンポジットレジン)を詰めておしまいです。
麻酔もいらない場合の方が多いです(もちろん心配でしたら麻酔もします)。
う蝕概論3 う蝕が象牙質に進行してからの治療法
●C2 う蝕が象牙質に進行
象牙質は神経支配を受けるので、症状が出はじめます。
冷たいものがしみる、
だまっていてもちょっと痛いな、とか。
この段階だと、歯の部位、虫歯の大きさによって少しずつ治療に違いがでますが、基本的には1〜2回の処置で終了します。
●前歯の場合 ・コンポジットレジン(プラスチック。白いつめもの)
→その日で終了。
●小臼歯の場合 ・コンポジットレジン・銀歯
→その日は型をとって、次の回にセットして終了。
●大臼歯の場合 ・銀歯・コンポジットレジン
C2といってもC3に近いものもあればC1に近いものもあります。
C3(う蝕が歯髄に進行)に近い場合は、コンポジットレジン、銀歯を入れた後も
ず〜っと痛みやしみが残ってしまう場合もあります。
その時は、残念ながら神経を取らなければならないかもしれません。
やはり『早期発見、即時処置』が大切です。
う蝕概論4 う蝕が歯髄に進行してからの治療法(1)
●C3 う蝕が歯髄に進行
・歯髄とは? 一般的に「しんけい」と呼ばれています。血管も含んでいます。
冷たいものはもちろん、熱いものもしみ始めます。
だまっていても痛いなどの症状が出ます。
残念ながら「しんけい」をとることになります。
この言葉だけを聞くとかなり怖くなりますが、麻酔が効いてしまえば特に問題はありません。
治療時間が長くなってしまうので口をあけているのがつらくなるかもしれませんがその時は休憩をとりながら行います。
タービン(キーンという音のする機械)や
リーマーと呼ばれる小器具(左図)を使い、
機械的に汚染された部分を取り除き(機械的清掃)、
あとは根の中に薬を入れます(貼薬=ちょうやく)。
治療してから後日に『しんけいをとったのに何で痛いの?』というご質問をよく受けますが、上記の機械的清掃と貼薬(いろんな種類の薬があります)によって徐々にオサメテいくものなので、一度に簡単にスパっと痛みをなくすのは難しいです。
なにしろ『神経』をとってしまうわけなので。。
う蝕概論5 う蝕が歯髄に進行してからの治療法(2)
「しんけい」をとった後、噛んだり、歯をたたくと痛みが残ることがあります。
これは、よくみられる症状です。
機械的清掃と貼薬により徐々に鎮めていくことになります。
痛みが鎮まったら、神経があったスペースにつめものをします。
その次からの最も一般的な流れは
(1)金属の土台を立てるための型とり
↓
(2)土台を立てて(上図左)、削って、また型とり
↓
(3)白い歯または銀歯が入る(上図右)
場合によっては金属の土台ではなくレジンを用いる場合があり、
その時は治療回数が1回減ります。
一般的ではない流れとしては、虫歯の範囲がごく小さい場合限定で
コンポジットレジンを充填して終了する場合もあります。
う蝕概論6 う蝕が歯髄に進行してからの治療法(3)
●もう1つのC3
前回までのC3(普通のC3と呼ぶことにします)のお話は
虫歯が進行して歯髄(神経)まで達していた場合に
やむを得ず機械的清掃と薬で処置をするということでした。
今回のもう1つのC3というのは、
根の先に膿み(うみ)がたまってしまったパターンです(上図左)。
まず、元々神経のあったスペースにつめられた「つめもの」(上図中)を慎重にとりのぞきます。
その後は、『機械的清掃(上図右)と貼薬』という根の治療の基本に戻りますが、
普通のC3よりは機械的清掃をたくさん行う必要があり、
症状が落ち着くまで時間がかかることが多いです。
根の先に膿み、出血がみられない、歯をコンコンたたいても痛くない
以上のことが達成されたら、再び「つめもの」をすることになります。
う蝕概論7 根まで壊してしまった場合の治療法
●C4 虫歯が進行して、根まで壊してしまった状態です。
前回までのC3に対する根の治療をしたとしても、
その根自体が壊れてしまっているので、
土台を立てて差し歯等にするのは不可能です。
基本的には抜歯となります。
ただ、大きな義歯にするしかない方の場合、
症状さえなければ意図的に残しておく場合もあります。
これは、このことによって歯槽骨(しそうこつ)の吸収が遅くなるからです。
う蝕概論8 虫歯のできやすい場所は?
●う蝕(=虫歯)の好発部位(できやすい場所)
(1)小窩裂溝(しょうかれっこう)
臼歯部の咬合面(こうごうめん=かむ面)の小さいくぼみやみぞ
(2)歯頚部(しけいぶ)
歯と歯ぐきの境目
(3)隣接面(りんせつめん)
歯と歯の間、特に一番キツく接している部分
(1)(2)は適切なブラッシング(別の機会にでも)で対応できますが、
それだけでは難しいのが(3)です。
かなりの「スキっ歯」でないと(それでも無理かも!)歯ブラシが届きません。
→歯ブラシが届かないということは
→→虫歯の原因であるプラークがそこに停滞することになります。
補助器具の使用をお勧めします。
デンタルフロス=糸ようじを使ってみて下さい。
物は試しで1度使ってみてください。
けっこう汚れがついてますよ(きっと臭いもします)!
う蝕概論9 ウルトラフロスのオススメ!
デンタルフロスは慣れるまで使いにくいという方もいらっしゃいます。
特に奥歯の方は、口を大きく開けて、
両手の指を奥までいれなければなりませんので。。。
そんな時にお勧めなのがウルトラフロスです。
大きなドラッグストアーにはおいてありますし、
当院にもあります。
なかなか使いやすいですよ!
う蝕概論10 歯みがきについて(1)
・歯みがきの目的は?
→う蝕、歯周病(「診療内容について|歯周病についてのコラム」にまとめてみました)
の原因であるプラークを取り除くことです。
・歯みがきの方法
→歯ブラシを確実に当てること。強い力は全くいりません!
(かえって歯肉を傷つけたりする原因にもなりかねません)
やさしい力で着実に当てることが大切です!
力より回数です(ホームランよりクリーンヒット!?)。
プラークは歯石とは違って歯ブラシさえ当たれば
自分で落とすことが可能です。
う蝕概論11 歯みがきについて(2)
・歯ブラシの必要な部位に確実にヒットさせ、みがき残しをなくすためには?
→歯みがきの方法を習得してしまう。
来院していただくのが一番なのですが、
一度「鏡」をよ〜く見ながらみがいてみて下さい。
案外、自己流で歯ブラシの当たっていない部分が多々あります。
わかりやすくするために、専用のプラーク染め出し液というのも市販されています。
当たっていないところ=プラークが残ってしまう部位です。
→みがく順番をあらかじめ決めておいてしまう。
あっちにいったりこっちにきたりだと、
忘れさられる部分がでてきてしまうものです。
例えば、右下の外側〜前歯の外側〜左下の外側、
続いて、左下の内側〜前歯の内側〜左下の内側のように、
自分の中で決めてしまうのは良い方法だと思います。
→歯みがき粉は仕上げに使う。
最初は水だけでみがいて下さい。
はじめっから歯みがき粉を使ってしまうと、
・口の中がいっぱいになって長時間みがけない
・どこを磨いているのかみえにくい
・爽快感のみで終わってしまう などの弊害があります。
以上3つがかなり大きなポイントになります。
う蝕概論12 歯みがきについて(3)
前回のお話はみなさんにあてはまるであろう基本的な方法でした。
今回は補足的内容です。
う蝕概論8では、う蝕好発部位(小窩裂溝、歯頚部、隣接面)を紹介しましたが、
その他に個人個人でなりやすい部位があります。
それは、
・歯並びの悪いところ
→とにかくみがきにくいです。より一層の注意が必要です。
補助器具を是非とも使ってほしい場所です。
・前に虫歯になった所
→ここは、みがけていなかったから過去に虫歯になってしまったわけで、
「弱点の場所」といえます。再び虫歯になってしまいやすい場所と言ってもよいでしょう。
個々人にあった磨き方が必要になってきます!
子供の頃から慣れ親しんだ自己流ではなく
一度、いらしていただいてちょっとしたコツを覚えてしまいませんか?